消化器内科
概要
消化器内科の各分野(消化管、肝臓、胆道・膵、炎症性腸疾患)を専門とする経験豊かなスタッフが在籍しており、救急診療を含めた各種疾患に対応しています。特に内視鏡検査件数が非常に多いことが当科の診療の特色であり、別表に示すように上部消化管内視鏡が年間約9500件、下部が約3500件、ここ数年は大腸癌に対するESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)、EUS(超音波内視鏡)の件数が増加傾向にあります。
今後ますます加速する超高齢化社会に伴い、消化器内科には安全性や確実性を確保した上でより高度で低侵襲な医療が求められています。多職種と連携・協力しながら質の高い医療を提供して地域医療に貢献するとともに、次世代を担う若手消化器内科医の育成に努めていきたいと考えています。
主な検査、治療件数
2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | ||||
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上部内視鏡 | 8,381 | 8,251 | 8,279 | 8,578 | 8,537 | 9,024 | 9,635 | 9,689 | 9,510 | 9,307 | |||
食道EMR(内視鏡的粘膜切除術) | 15 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 1 | |||
食道ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術) | 1 | 22 | 26 | 33 | 36 | 33 | 35 | 34 | 19 | 32 | |||
胃EMR(内視鏡的粘膜切除術) | 103 | 33 | 0 | 1 | 4 | 3 | 5 | 8 | 8 | 5 | |||
胃ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術) | 20 | 121 | 140 | 177 | 214 | 220 | 186 | 238 | 208 | 179 | |||
食道ステント留置術 | 9 | 10 | 10 | 11 | 11 | 10 | 17 | 6 | 14 | 9 | |||
胃・十二指腸ステント留置術 | - | - | 5 | 9 | 4 | 8 | 26 | 31 | 25 | 26 | |||
食道静脈瘤治療 | 39 | 26 | 14 | 29 | 15 | 16 | 37 | 32 | 21 | 42 | |||
PEG(内視鏡的胃瘻造設術) | 100 | 65 | 75 | 79 | 31 | 28 | 30 | 26 | 22 | 24 | |||
LECS(腹腔鏡・内視鏡合同手術) | - | - | - | 3 | 1 | 2 | 1 | 1 | 2 | 7 | |||
下部内視鏡 | 3,192 | 2,948 | 2,926 | 3,273 | 3,309 | 3,649 | 3,877 | 3,827 | 3,542 | 3,338 | |||
ポリペクトミー | 429 | 293 | 350 | 375 | 298 | 317 | 219 | 274 | 277 | 397 | |||
EMR(内視鏡的粘膜切除術) | 238 | 362 | 355 | 371 | 526 | 660 | 890 | 847 | 694 | 638 | |||
ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術) | - | 8 | 10 | 9 | 19 | 30 | 54 | 50 | 45 | 38 | |||
大腸ステント留置術 | 3 | 6 | 4 | 3 | 2 | 14 | 39 | 38 | 30 | 27 | |||
小腸内視鏡 | - | - | - | - | - | - | - | - | - | 7 | |||
ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影) | 245 | 335 | 306 | 366 | 270 | 453 | 443 | 438 | 466 | 437 | |||
EUS(超音波内視鏡) | 42 | 48 | 75 | 67 | 86 | 88 | 145 | 223 | 252 | 290 | |||
EUS-FNA(穿刺吸引法) | – | – | – | – | – | 10 | 26 | 57 | 57 | 83 | |||
EUS-BD(胆管ドレナージ) | – | – | – | – | – | 0 | 1 | 4 | 7 | 16 | |||
EUS-CD(囊胞ドレナージ) | – | – | – | – | – | 0 | 0 | 2 | 2 | 4 | |||
EUS-PD(膵管ドレナージ) | – | – | – | – | – | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | |||
EUS-CGN(腹腔神経ブロック) | – | – | – | – | – | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | |||
肝癌治療 | TACE(肝動脈化学塞栓療法) | 103 | 101 | 84 | 83 | 65 | 71 | 89 | 93 | 101 | 105 | ||
RFA(ラジオ波焼灼術) | 0 | 0 | 5 | 3 | 7 | 6 | 5 | 4 | 4 | 9 |
消化管癌の内視鏡診断と治療
消化管の癌は主に胃、大腸、食道に発生します。国立がん研究センター「がんの統計2016」によると、部位別がん死亡数は1位の肺癌に次いで2位 大腸癌、3位 胃癌となっており、罹患率、死亡率がともに高い疾患と言えます。しかし一方で消化管癌は内視鏡検査により早期発見することが可能であり、初期の段階でみつかれば表層を切除するだけの内視鏡を用いた治療で完治することができます。
当院では人間ドックを含めて1日40-50件の上部消化管内視鏡検査(胃内視鏡)を施行しており、癌などの異常が疑われれば色素散布やNBI拡大観察などを適宜実施しています。大腸内視鏡検査も1日15-20件実施しており、ポリープや早期癌が発見されたときはその場で切除し、より早く確実な診断および治療を心がけております。内視鏡検査は基本的には予約制ですが、緊急性のある状態や疾患によっては来院当日に検査することも少なくありません。そのため紹介患者様には絶食(水分摂取可)で来院していただいております。
内視鏡治療について、当院では2009年から内視鏡的粘膜下層剥離術:ESD(Endoscopic Submucosal Dissection)を本格的に導入し、近年では食道、胃、大腸をあわせて年間250~300件の治療実績があります。出血などの偶発症がなければ入院期間は5日間で、退院翌日から軽労働も可能です。
検査の結果で進行癌と診断されたときには外科へ紹介し手術の方針、あるいは当科もしくは2017年より新設された腫瘍内科で化学療法の方針となります。一口に癌といっても様々な治療法があり、患者様の全身状態や病気の進行度(ステージ)を考慮したうえで、他科とも密接に連携し総合的に治療を進めています。
慢性肝疾患の診断と治療
日本の慢性肝炎の約70%はC型肝炎であり、無症状の人を含めると150万〜200万人の感染者がいるとされています。C型慢性肝炎の治療はここ数年で飛躍的に進歩して、飲み薬だけで治る時代になっています。従来のインターフェロン治療が受けられなかった方、効果が得られなかった方でも、ぜひ一度専門医にご相談ください。肝臓は「沈黙の臓器」と言われ自覚症状が出にくいため、感染していることに気づかないまま病気が進行していることがあります。まだ一度も検査を受けたことがないという方は、肝炎ウイルス検査を受けることをお勧めします。
また近年は、B型肝炎でもC型肝炎でもない肝硬変・肝癌の患者様が増加しています。その多くはアルコールを飲まない人の脂肪性肝炎- NASH(ナッシュ)に由来するとされており、肥満、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が原因と考えられています。今後はウイルス性肝炎に代わってNASHが肝臓病の主役となることが確実視されており、当科ではプライマリ・ケア医や糖尿病専門医と連携してNASHの診療に力を入れていきたいと考えています。
肝癌に対するカテーテル治療(血管塞栓術)
2018年1月より新しい血管造影装置が稼動しています。今回導入された装置では血管造影と同時にCT撮影が可能で、最新技術の肝動脈化学塞栓療法支援ソフトウェア(EmboGuide)により、治療成績の向上や治療時間の短縮による患者様の負担軽減が期待できます。
胆道・膵疾患の診断と内視鏡治療
各種画像検査や内視鏡検査を駆使し、膵・胆道病変に対する緻密な診断や膵・胆道癌の早期発見・早期診断に努めております。また、難治性である膵・胆道癌に対しては、外科・放射線科・腫瘍内科とも連携し、最適な治療を提供出来るよう努力しております。
内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)関連手技を年間約450件、超音波内視鏡検査(EUS)関連手技を約300件行っており、緊急処置にも対応しています。近年、膵癌、腫大リンパ節、粘膜下腫瘍の確定診断に有用である超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)の件数が増加しており、高い正診率を得ています。また、EUS-FNA手技を応用した経胃・十二指腸的な胆道ドレナージ(EUS-BD)や膵嚢胞ドレナージ(EUS-CD)、小腸内視鏡を使用した術後再建腸管に対するERCP関連治療など、最新の内視鏡治療も積極的に行っております。
炎症性腸疾患:Inflammatory Bowel Disease (IBD)
炎症性腸疾患とは主として潰瘍性大腸炎とクローン病から成る、腸に原因不明の慢性炎症を生じる疾患で、近年、患者数の増加が問題となっています。
長岡においても着実に患者数は増加しており、潰瘍性大腸炎でこれまでに当院で治療を受けた患者様は約1,000名に及びます。現在では潰瘍性大腸炎患者様約300名、クローン病患者様約110名が通院中です。両疾患ともなかなか良くならない難治例の治療に関しては、少しでも早く確実に治療を行うことが大切であり、その遅れが更に治療を難しくしてしまいます。当科では血液検査、内視鏡や各種画像検査(CT、MRIなど)を用いて病気の状態を正確に知ることが特に大切であると考えており、検査によって得られた情報からそれぞれの患者様のニーズにあった、かつ必要十分な治療を提案させていただいております。
また当院は消化器病センターとして内科・外科が連携して診療にあたっており、炎症性腸疾患に関しても不必要な手術を避け、より積極的な内科治療をできるようになっています。
スタッフ紹介

副院長
髙村 昌昭
専門領域 | 肝胆膵疾患 |
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認定資格等 | 医学博士 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医・指導医 日本消化器病学会 専門医・指導医・甲信越地方会評議員・学会評議員 日本肝臓学会 専門医・指導医・東部会評議員・学会評議員 日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医・甲信越支部評議員 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医 新潟県緩和ケア研修終了 |
出身大学・卒年 | 新潟大学医学部 1996年卒 |

内科部長
佐藤 明人
専門領域 | 消化器疾患全般、内視鏡診断・治療 |
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認定資格等 | 医学博士 日本内科学会認定内科医 日本消化器病学会専門医 日本消化器内視鏡学会専門医 日本消化管学会 胃腸科認定医 |
出身大学・卒年 | 東邦大学医学部 1998年卒 |

内科部長
本田 穣
専門領域 | 消化器疾患全般、炎症性腸疾患 |
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認定資格等 | 医学博士 日本内科学会認定内科医 日本消化器内視鏡学会専門医 |
出身大学・卒年 | 東邦大学医学部 2000年卒 |

内科部長
岡 宏充
専門領域 | 消化器疾患全般、肝胆膵疾患 |
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認定資格等 | 医学博士 日本内科学会総合内科専門医 日本消化器病学会専門医 日本消化器内視鏡学会専門医 日本肝臓学会専門医 |
出身大学・卒年 | 新潟大学医学部 2003年卒 |

内科医長
中野 応央樹
出身大学・卒年 | 2012年卒 |
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内科医長
杉田 萌乃
出身大学・卒年 | 2015年卒 |
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内科医員
宮崎 遥可
出身大学・卒年 | 2019年卒 |
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内科医員
吉田 耕太郎
出身大学・卒年 | 2020年卒 |
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